●老齢年金制度の見直し@
2022年4月より、在職老齢年金制度について2つの法改正がありました。1つ目は、60歳以上65才未満の在職老齢年金の「支給停止基準額の引き上げ」です。これは、基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円を超えた場合、その合計額に応じて年金額の一部または金額が支給停止となっていました。今回の改正では、支給停止基準額が、現行の28万円から47万円に引き上げられました。ただし、該当者は限られており、男性は1961年4月1日まで、女性は1966年4月1日までに生まれた人です。
なお、65歳以上の在職老齢年金については、従来の支給停止基準額である47万円に変更はありません。
2つ目は、65歳以上の在職老齢年金受給者に対する「在職定時改定の新設」です。厚生年金の被保険者は、老齢厚生年金を受給しながら就労する場合、加入条件を満たす限り、70歳まで厚生年金に加入する必要があります。現行の制度である退職改定では、資格喪失となる退職時や70歳到達時に、年金額をまとめて改定するため、就労を継続した加入実績がすぐに年金額に反映されない仕組みとなっています。
在職定時改定の導入により、年金額の改定は、毎年1回定時に行われ、10月分の支払から反映されることになります。ただ在職定時改定では、毎年年金支給額が引き上げられるため、当初は支給停止基準額である47万円を超えていなくても、ある時点で支給停止や減額の対象となる可能性があるため、注意が必要です。
●老齢年金制度の見直しA
また今回の改正により、公的年金である国民年金や厚生年金の受給開始時期の選択肢が拡大されました。これまで、受給資格者は、希望すれば60歳から70歳の間で自由に受給開始年齢を選ぶことができました。
65歳より早く受給を始めた場合(繰り上げ受給)、繰り上げ請求をした月から65歳到達月前月までの月数に応じて、年金額が減額されます。2022年4月以降、1月あたりの減額率は、これまでの5%(最大30%)から、4%(最大24%)に変更されます。
一方、65歳より遅く受給を始めた場合(繰り下げ受給)には、65歳から繰り下げた月数によって増額した年金を、生涯にわたり受給することができます。2022年4月以降は、繰り下げの上限年齢が70歳から75歳に引き上げられました。増額率は変わらず、1月あたり7%で、最大で84%となっています。
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